
インスペクションというのは、既存の住宅の劣化状況を調査して、定型の報告書にまとめる制度です。中古住宅の売買の際に、第三者の公平な評価を得る為、自分の住まいの公平な評価を知りたいときの為の制度です。(流れ的には、アメリカの不動産取引では昔からこの制度があって、利用するのが当たり前となっていたのが、最近、日本版インスペクションの制度が始まりつつあるという感じです)
ですが、実際は補助金や節税の申請のときに、このインスペクションが前提となっていることがあり、そのためにインスペクションをする場合がほとんです。(関東では、不動産売買の第三者評価としての利用も徐々に増えているそうです)
インスペクションが必要なリフォームの補助金の一つが、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」という補助金です。
そして、いつも少し困るのが、国の定める「インスペクション」と、長期優良…の「インスペクション」は異なることです。報告する書式は、ワードで作ったひな形が同じなのか、罫線や段落などの形は同じですが、実際に書き込む、調査する内容は違います。(同じ報告書は使えません)
例えば、長期優良のインスペクションだと、補助金を申請する工事を軸にチェックするので、窓を替えるなら、その窓の遠景、近景、ガラスのアップ、の撮影が必要ですが、いわゆる「インスペクション」は不要です。天井の断熱材を替えるなら、天井の断熱材を中心とした天井裏のチェックと撮影をする必要がありますが、いわゆる「インスペクション」はそうした指定はないです。
そのため、長期優良のインスペクションは、基本的に工事内容が概ね決まってから行わないと出来ません。
しかし、長期優良のマニュアルによると、まずインスペクションを行って、工事計画を立案し、契約した上で申請することになっています。
その通りにしようとすると、まずはじめにインスペクションを行う時に、工事するかもしれない部分を全てチェックし、撮影し、報告書にまとめる必要があるという事になりますが、実務的には数日の日数がかかり、費用的にも高額になってしまいますし、そうしたインスペクションは行われていません。
現実的には、まず正式ではない現調を行って、どういうところを直すべきか、性能を上げるべきかを検討して、見積と打合せを何度か行ったうえで計画を内定し、改めて正式な長期優良用のインスペクションを実施する。となります。
もっというと、実際にインスペクションをしたところ、耐震補強の方が必要だったということもあり得ます。なので、補助金や耐震など、多岐にわたる診断ができるところに、まずは見てもらうことが大事だと思います。

